サイエンス

時計で○○が学べる。 『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』を読んで 

 

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昨今、IPhoneApple Watch など多機能な機械で時間を見ることが出来ます。時計は人間の生活を豊かにしてきました。しかしながら19世紀後半にアメリカのオハイオ州キプトンという町で大惨事な鉄道事故が起きました。原因は時計の針が5分遅れていたことです。車掌さんが遅れていた時計を信じてしまったので電車のダイヤが乱れて事故につながったと言われています。その当時は鉄道会社は時計に規定を設けていませんでしたが、この事故をきっかけに時計と時間管理を徹底するようになり時計の品質が良くなったと言われています。昔の人の試行錯誤があったからこそ、今の時計があります。

 

 本書はそんな時計についての5000年以上前から今の時計に至るまでの経緯が書かれています。時計の始まりは日時計です。その根拠はメソポタミア文明古代エジプト文明に、その痕跡が見つかっていることです。メソポタミア文明においては、紀元前1万年ころから農業がおこなわれており、人間は自然現象(季節など)に関心を抱いていました。メソポタミア文明を作ったシュメール人によって時間の概念が作られました。

日時計天文学などの科学知識を学べばどこでも設置でき、点検なども必要かったので
世界中に広がりました。

 しかしながら日時計には曇りや雨など悪天候では機能しないという欠点がありました。そこで開発されたのが水時計です。水時計時間とともに一定量の水が流れることを応用したものです。しかし水時計にも水の量が水圧できまるので正確な水時計を作るのが難しかったと言われています。当時は「時間は神のもの」と考えられていたため、僧侶が時計を管理していましたが、ギリシア時代になると科学者が天文学や物理学などの知識を駆使して水時計の改良をします。水時計はやがて世界に広がっていきます。他にも砂時計や花時計など自然の力を利用した時計が生まれました。

 しかし自然の力を使う時計は時間が見えなくて不便でした。そこで必要な時にいつでも時間が分かる機械式時計が開発されました。当時のキリスト教では「時」は「神」のものとされていて人間は「時」をコントロールすることが出来ないと考えられていました。例えば当時のキリスト教では、毎日のお祈りであるミサは時間を時間通りに実行されていました。これは神への忠誠心を表すためでした。このように時間を守るためには正確な時間を知らせてくれる時計が必要でした。そこで機械式時計が発明されました。

 機械式時計は教会や王宮などから、町の中心などの広場に設置されるようになり、商売が盛り上がるなどして生活に便利になります。そして人々はより便利さを求めて考え出されたのがゼンマイをエネルギーとした時計です。

 そして16世紀になるとガリレオによる振り子実験から振り子時計が開発されました。ゼンマイはさらに発展を遂げ腕時計の開発へとつながります。ゼンマイ式腕時計の初期は、ゼンマイのエネルギーが約2日間と、週休二日制が導入で時計を2日間外すと、時計が止まってしまうのが悩みの種でした。そこで各国で電池式ウオッチ(腕時計)の研究が行われました。アメリカとフランスは共同開発しましたが製品化には至りませんでした。そのあとアメリカのハミルトン社の商品開発がありましたが故障の問題を抱えていました。そして日本のシチズン時計によってこの問題は解決されました。時計は機械式から電子式になりましたが機械式と電子式のメリットを持つ腕時計が開発されます。

 その後GPS機能などを含んだ高性能な時計が開発によって、地球上のどこにいても正確な時間場所が分かるようになりました。

 

 そんな時計にも現在は問題があります。本書ではそれはうるう秒の概念だと述べられています。うるう秒を取り入れることで、豪州の航空システム会社の異常で、飛行機の運航が乱れたりする問題がありました。2012年に世界で開催された会議でうるう秒の賛否の議論がありましたが、結論は出ておらず2023年の会議で決めることになっているそうです。他にも本書で筆者は時間の単位がいつまでも「六十進法・十二進法」でよいのか疑問を抱いています。時間の単位は1秒までが十二進法・六十進法で表記されて一秒未満の単位は10進法で表されるのが不思議だなと思います。例えば100メートル走で10秒30は10秒1/2でなく10秒3/10である。このように時計が発達することでそもそも「時」とは何ぞやといった問題が出てきました。

 

 【感想】本書で今までの時計の歴史をたどってきましたが、時間というものがしっかりわかるのは時計のおかげたと思います。僕は生まれた時代は時計というもの当たり前にあるもので時計に関して意識することはあまりありませんでした。液晶の時計などが出来たのも昔の人の研究があったからだということが分かりました。科学者が液晶という物質を発見していなかったら、僕たちの生活に欠かせないiPhoneやテレビ AIなどはこの世にはなかったと思います。その世界を考えてみるのも楽しみの一つだと思います。その世界はいまだに想像がつきません。時というものも存在しているようで目には見えない不思議なものだなと感じました。そう考えるとドラえもんの四次元の世界を考えた藤子・F・不二雄さんは偉大な人だなと改めて本を読んで感じました。

 

 そして本書は世界史が好きな人には大いにおすすめだと思います。また物理や化学など自然科学に興味がある人は時計の仕組みに関して載っているのでおすすめです。

高校生で物理とか化学って勉強する意味って何だろうと疑問に思った人には、
実際に物理、化学がどのように使われているか時計の開発の話を踏まえて書かれてあるので本書を手に取ってみるといいと思います。

 

 この本に書かれているのは題名にもある通り人と時計の関わりの歴史です。
本書に登場する時計に情熱を燃やした人たちの生きざまを感じることでより時計が身近でかけがえのないものになると思います。

 

 

時計の科学 人と時間の5000年の歴史 (ブルーバックス)

時計の科学 人と時間の5000年の歴史 (ブルーバックス)